フライフィッシングの小部屋


 管理釣り場で爆釣する


   フライフィッシングを考える


    遠い昔の先祖から受け継がれた狩猟民の遺伝子が騒ぐ。
    だから、男たちは子供の頃から釣りに出掛けたのかも知れない。


    僕も近くの川で小さなフナを、河口ではハゼを釣った。
    大人になって初めて釣り堀でニジマスを釣り、さらに渓流に足を運んでイワナやヤマメという渓流魚と出会った。


    温暖な房総半島で生まれ育ったためか、渓流魚への憧れが人一倍強い。
    何しろ、千葉県は沖縄県と並び、全国で2県だけ渓流魚が棲息しない県なのだ。
    身近に居ないから、余計に憧れる。あの美しい姿や色合いが脳裏から離れない。


    最初の渓流釣りは餌釣りだった。そして、ルアーを少しやり、フライフィッシングに取り憑かれた。
    この釣りは、毛鉤という疑似餌で魚を騙して釣る。
    日本でも古来よりテンカラ釣りという毛鉤釣りが存在してきた。
    川の職漁師は、テンカラ釣りで渓流魚を軽快に釣り歩いたという。


    テンカラ釣りは、一定の長さの釣り糸が竿に結ばれている。
    一方のフライフィッシングは、釣り糸(ライン)がリールに巻かれているため、長さは自由になる。
    そこが両者の大きな違いだろうか。
    
    フライフィッシングとは、太く重さのあるフライラインにリーダーを結び、
    さらにティッペットという細い釣り糸をつないで、
    先端にフライと呼ばれる疑似餌を連結して水面や水中へキャストする魚釣り。
    フライラインはリールに巻いて収められ、その場の状況次第でどれだけ出すかは釣り人の判断で自由だ。


    対象となる魚は、広くトラウトたち。
    日本では、イワナとヤマメが渓流には棲息し、
    管理釣り場ではニジマスを中心に様々なトラウトを放流する所が多くなった。


    「フライフィッシングは、フルキャストできてこそ上手い!」という意見がある。
    確かに、美しいフォームで遠く正確な目標へフライをキャストしたら、それは見事だ。


    ただ、キャストは運動能力や運動センスもかなり影響するのではないだろうか。
    テニスや野球と同じで、能力には各自に大差があり、上手い下手があるものだ。
    だから、キャストは下手でも、魚を釣って楽しめれば良いのではないだろうか。


    僕も、キャストは大の苦手だ。
    キャスティングの練習も特にしないし、何よりも肝心のロッドにお金も掛けない。
    ロッドが余りにも高価に感じてしまうのだ。
    ブランド品だと軽く数万円はして、バンブーロッドになると10万から20万円もするから驚きだ。
    僕は、なるべく安いロッドやリールで釣りを楽しみたい。
    差額のお金で、何度でも管理釣り場へ足を運びたい。


    フライラインには浮く(フローティング)タイプと沈む(シンキング)タイプがある。
    また、形状でも長いラインの前後がテーパー状に細くなったタイプ(DT)とフラットタイプやウェイトホワードなどがある。
    僕は浮くタイプでDTタイプを使っている。
    DTタイプならば、ラインに傷が付いた時に、前後を入れ替えて使うことも出来るから経済的だ。


    今年はシンキングタイプにも挑戦しようとは考えているが、実はフライラインもかなり高価なのだ…。


    フライフィッシングには、フライの他にも様々な小物が必要だ。
    経済的な観点からも、そんな品々も出来る限り手作りしている。
    手作りについては、『手作りコーナー』で紹介しています。
    ぜひとも、チャレンジしてください。


  爆釣とは?


    さて、このコーナーのタイトルは、『管理釣り場で爆釣する』だ。
    どれだけ釣れば、爆釣なのだろうか。


    「一日で100匹釣る」とかの文字を、ホームページや本のタイトルで見掛ける。
    それだけ釣れば、確かに爆発的に釣れたのかも知れない。


    「でも、数が問題ではないのでは…」という批判の声が聞こえてもくる。
    僕も、「本当に目指すのは、数ではありません!」と言わねばならない。
    「では何故に、『爆発的に大量に釣る!』との言葉を使うのだ」と指摘されそうだ。


    それは、一度でも沢山の魚を釣り上げて自信を持つことが必要だ、と思うから。
    自信を持てば、必然的に次ぎのステップへ向かうはず。『釣り方』にこだわりながらの釣りを始めるものだ。


  キャッチ&リリースについて


    キャッチ&リリースについても色々と意見がある。


    僕は、渓流で餌釣りを始めた頃は、キャッチ&イートだった
    笹の葉を敷き詰めた魚籠に、ヤマメやイワナを並べて喜んで渓流を釣り歩いた。
    でも、渓流に増えるのは釣り人ばかりで、魚がどんどん減った。こうなると、食べてばかりもいられない。
    だから、リリースを心がけるようになった。

    現在は、ほぼリリースするが、水が奇麗な場所ならば、数尾のヤマメやイワナを土産に持ち帰る
    狩猟民の血が騒ぐのだ。


    魚体を痛めずに素早くリリースするには、バーブレスフックは当然のこと。
    僕は、自宅でフライタイニングする際に、フックの返しは潰した上でタイニングしている。


    また、ランディングネットもラバーネットを提唱する管理釣り場が多い。
    先日、管理釣り場の管理人に確認したところ、糸のネットの結び目が魚を傷付けるらしい。
    僕の手作りのランディングネットは「これなら大丈夫です」との答えだった。


    因みに、ネット部分は洗濯物を入れる洗濯ネットを使っている。
    流石に、洗濯物を痛めないように優しい素材で出来ているから大丈夫なのだ。


  マーカー釣りでトラウトを釣る


    管理釣り場へ足繁く通うようになって4年が経った。それまでは、年に数回で、しかもまるで釣れなかった。
    魚影は見えるし、足下の岸辺近くを悠然と通り過ぎる大きな魚までいる。
    それなのに、何故に釣れないのだろうか。
    そんな疑問が、徐々に膨らみ、遂に自分なりに答えを出そうと思い立ったのだ。


    答えは、「管理釣り場は管理釣り場。自然渓流ではありません」という実に簡単なものだった。
    では、何がどう違うのだろうか。
    それは、魚が捕食する餌。餌がまったく違うのだ。


    管理釣り場のトラウトは、養鱒場で生まれて以来、ペレットという大豆ほどの大きさの固形飼料を食べて育ち生きている。
    つまり、川虫の幼虫や成虫、さらには陸棲昆虫を必死に捕食して育ったわけではない。


    だからこそ、釣り人としては、使用するフライを大胆に変える必要があるのだ。
    ドライフライにこだわらずに、マラブーやタコフライ、それにエッグなどの沈めるタイプのフライを使い、
    マーカーでアタリを取りアワセる。
    これが、管理釣り場での爆釣への第一歩だ。


    タコフライは『オクトパス・ボム』が正式名で、前橋のマエストロ氏が考案し販売している凄いフライ。
    僕は、インターネットの写真を見て真似して作ってみた。すると、驚くほどに釣れるのだ。
    恐らくは、ペレットをイメージしたフライなのだろう。
                                                          



    エッグフライは、釣り仲間から作り方を教わったが、大きさにビックリした。
    エッグとは本来はイクラのような魚卵のはずだが、
    そのエッグは5円玉か10円玉ほどの直径がある。
    これじゃ、雀かウズラの卵だ。
    しかし、これを沈めると確かにアタリがくる。
    魚にしてみれば、タコフライと同じで水中に落下して妖しく漂うペレットに見えるのかも知れない。


    マラブーもよく使われるフライだ。
    柔らかい羽を束ねてフックにテール状に留めて押さえ、さらにボディー部分をグルグルと巻いただけのフライが釣れる。
    色はオリーブから黄色、オレンジ、ピンク、黒と様々だ。
    「マラブーは、ヒルに似て見えるようだ」と釣り仲間に聞いたことがある。
    魚が、本当はどんな餌だと思っているのか、僕は知らない。




    MSCフライも効果がある。
    この名前、実はメイフライ、ストーンフライ、カディスの頭文字を並べているそうだ。


    これを作ろうと思い、有名なフライショップSを訪れて若い店員に材料を尋ねた。
    すると、「これですよ。これを適当にぐるぐる巻けば出来上がりです」と説明し、化学繊維の糸を買わされた。
    だが、彼の言葉は真っ赤な嘘であった。


    その後、同じ店で別の店員が「3つの頭文字だ」と教えてくれ、
    材料に使う柔らかいウザギの毛を選んでくれたのだ。
    「テールは、羽の根元の柔らかい部分を捨てずに使うんです。
    パートリッジが良いですね。作ってみてください」。
    同じ店でも、店員によってこうも違うのだろうか。
    とても知識があり親切な店員は、残念ながら新宿店へ移動してしまった。


    それはそうと、このMSCフライは、3種の水棲昆虫のニンフ時代を表現しているようだ。
    水中でウサギの毛は小さな気泡を含んで煌めき、テールはゆらゆらと揺れて魚を魅了するのだろう。


    他には、ゴールドリブド・ヘアーズイヤーだ。
    野ウサギの毛でボディーをダビングし、金色の細い針金でグルグルと巻いてアクセントにしている。
    これは、オーソドックスなニンフだが、意外にも入れ食い状態を経験したことがある。


    釣れるポイントは、当然ながら魚が沢山集まっている所だ。
    水が奇麗な管理釣り場なら一目瞭然。
    マッディーな池では、水の流れ込みや水車からの流れ出しを狙う。
    まず間違い無く魚が集まっているものだ。
    また、季節による変化も無視できない。
    暑い季節には、少しでも日陰に魚は集まり、冬は暖かい場所に出てくるようだ。
    まあ、釣り人も暑けりゃ涼しい木陰を探すし、寒ければお日様を追いかけるからね。


  キャストとアワセとランディングの仕方


    マーカーを付けた下に小さなオモリとフライを結ぶのだが、
    浮子下はどれくらいの長さにしたら良いのだろうか。
    どの辺りを魚は泳いでいるのだろう。


    水深との関係を考えながら、浮子下を決めよう。
    そして、釣りながら徐々に長さを調整する。


    まあ、手っ取り早いのは、釣れて魚とやり取りしている釣り人を見ることだ。
    マーカー釣りなら、派手なマーカーと釣れた魚の間の長さを素早く盗み見るのだ。
    「そんな狡いことはできない」という人は、釣り人に頭を下げて教えてもらおう。
    訊かれた釣り人は、無視はしないと思う。喜んで教えてくれるはずだ。


    さあ、浮子下も決まったら、お気に入りのフライを結んで無理せずにキャストしよう。
    特に、マーカーと小さなオモリを付けたマーカー釣りの仕掛けは、
    若干の重さがあるためギクシャクして投げにくいもの。


    何度も前後にフォルスキャスト(疑投)を繰り返していると、ライントラブルも起こしがち。
    無理せずに2回ほどのフォルスキャストで着水させる。
    後は、フライラインのたるみを素早く左手で引いて取り、
    ロッドの先端を水面まで下げた状態でじっとアタリを待つ。


    アタリは、マーカーの変化でわかる。
    マーカーが水中へ沈むパターンが一番多く、ピクピクと上下したり、ゆっくりと沈んだり、
    一気に消し込むこともある。
    また、マーカーが水面で微かにユラユラと動く場合は、魚の食い上げ状態だ。
    ともかく、マーカーに少しでも変化が起きたら躊躇なく、軽くロッドを立てるイメージでアワセを入れる。
    次ぎの瞬間、グーングイグイという強烈な引きが待っているはず。


    しかし、100パーセント魚をフッキングできるとは限らない。
    これは絶対!というほどマーカーは一気に消し込んだのに、
    魚の口にかすりもしないこともある。
    「参った、参ったな」と心の中で呟きながら、再びキャストを繰り返せば、必ず釣れる。
    釣れるはず。


    魚がフッキングしたら次ぎはランディング。
    ロッドを立て、ラインを左手で引きながら魚を寄せる。
    そして、ランディングネットですくい、フォーセップなどでフライを挟み、魚の口から外してリリースする。


    30センチ以下の魚ならこの一連の動きで対処できるが、魚が40センチ以上にもなると大変だ。
    何しろ、引きが格段の違いで強烈になるのだ。
    ここで、「負けるもんか」と力勝負に出たら、釣り人が完敗すること間違い無し。
    ティペットがプッツンと切れてしまい、水中に消える大きな魚影だけが脳裏に刻まれることになる。


    だから、相手が引いたらラインを出す、相手が休んだら引く。
    これを繰り返し、魚が疲れるのを待ちながら徐々に岸へと近付けるのだ。


    経験から、まず60センチまでの魚なら、このラインの出し入れでどうにかネットに収めることが可能。
    寄せる動作の最中に、ロッドとラインが一瞬でも一直線になるまで引かれた時は、必ず切られる。
    ロッドの曲がりを十二分に利用していない場合には、
    ティペットに瞬時に過度な力が加わり切れてしまうのだ。


    管理釣り場でマーカー釣りの場合、ティペットは4X(1号)を使っている。
    ちょっとばかり太いかなとは思うが、切られる心配が少なくてすむ。


    因みに、ドライフライで釣る場合は、流石にティペットも細くし、5X(0.8号)か6X(0.6号)を使う。
    細ければそれだけ魚の反応は良くなるが、アワセ切れの可能性は高くなる。


  ドライフライも試してみる


    マーカー釣りで釣れたら、ドライフライも試してみよう。
    キャストはマーカーが付いていないから、むしろスムーズにできるはずだ。


    水面に浮くドライフライにパシャッと魚が飛び出す光景は、必ずや視覚的な興奮と感動をもたらせてくれる。


    僕も、岩手県の渓流で最初にドライフライでヤマメを釣った光景を今でも覚えている。
    使用したフライは、釣りショップで購入した14番のエルクヘア・カディスだった。


    今でも、ドライフライで釣る場合は、まずはエルクヘア・カディスを結ぶ。
    クリーム色のエルクヘアをウイングにしたフライは、水面で良く見えて、かなり長く浮いている。


    ペレットを食べて育った魚たちだが、管理釣り場で自然の虫も捕食している。
    池によっては、水棲昆虫の羽化(ハッチ)が見られる場所もある。


    4月初旬、東北の管理釣り場でハッチを体験した。
    気温が上昇した午前11時頃、岸近くの浅瀬でハッチが始まり、魚たちのライズが始まったのだ。
    そこへ目掛けて静かにドライフライをキャストすれば、必ず魚は捕食する。


    ドライフライのアワセのタイミングが色々と言われている。
    「電光石火、瞬時にアワセないとダメだ」とは、フライフィッシングを始めた頃に本で学んだ知識だった。
    フライフィッシングとはやけに難しいのだな、と思ったものだ。
    魚は飛び出すものの、瞬時のアワセなどとても上手く出来ず、
    結果は中々魚が釣れない。
    つまり、「瞬時に素早く」と頭にインプットされたことで、
    どちらかと言えば早すぎるアワセになってしまったようだ。
    まだ魚の口にしっかりとフライが入らない状態でのアワセだから、フックは魚にかすりもしないで
    空中を舞う始末。


    今は、むしろ意識して遅めにアワセている。
    パシャッと魚が出た。
    すると、「出た!」と目が確認し、それから軽くロッドを立てる感じでアワセる


    フロート材を背中に背負ったバックフロートフライ(BFフライ)は、
    ドライフライよりもっと遅いアワセで良いようだ。
    「出ましたね。では」と呟き、ヨッコラショって感じで確かにフッキングする。
    ドライフライのタイミングでのアワセだと、フッキングしない場合が多いのだ。


    管理釣り場で、僕が使って実績のあるドライフライを紹介しよう。


    まずはエルクヘア・カディスで、12番から16番のフライを揃えて試そう。
    ボディーの色は黒っぽい暗からクリーム色の明までで、ハックルも茶色とグリズリーで巻いてみる。




    最近好調なフライが、バイビジブル。
    魚からは、昆虫や毛虫など様々に見えるらしい。
    カディスのエルクヘアをウィングとして付けない感じのフライで、代わりにファイバーのテールを付ける。
    ハックルはカディスより長めで、ボデイーの前後で色を変えて巻く。
    僕は、おおむね後ろ2前1のバランスだ。
    ハックルの色は、茶色(後ろ)とグリズリー(前)、茶色と白、グリズリーと白の組み合わせ。
    大きさは意外とデカイ12番で良く飛び出す。




    初夏から夏まで大当たりするのが、グリーン・キャタピラーだ。
    つまり青虫系の毛虫。
    特に大きな木の枝が岸辺を覆うような状況だと、狂ったように魚が飛びつく。
    毎日のように、木の枝から毛虫がポタンポタンと落ちてくるんだろう。
    フックに黄緑や緑色のダビングをして、グリズリーのハックルをただ縦に巻いただけの簡単なフライだ。
    着水してすぐに魚が飛び出す場合が多いが、
    出ない時は水を吸ってフライは直ぐに水面直下へ沈む。
    しかし、構わず様々なリズムで引いてやる。すると、強引に横取りする感じでフライに飛び付く。


    ドライフライ全般に言えることだが、浮いている状態で飛び出さない場合は引いてみる。
    スースーとかスイスイとか、リズムを変えながら引く。
    すると、結構魚は飛びつくものだ。
    「浮いてもダメなら、引いてみろ!」の精神で魚を食いつかせるわけだ。


    他には、ウェットフライも試している。
    特に、ソフトハックルと呼ばれるフライ。


    実に簡単なタイニングで作れるフライだ。
    フックのボディー部分にオレンジやピンク系の糸をきっちりと巻き、頭にハックルをパラリと巻いただけ。
    ハックルには、パートリッジの羽が柔らかくて適しているようだ。
    キャストすると、水面に若干の間は浮いているが、すぐに水面直下に沈む。
    浮いている時に飛びつく場合もあるが、スイスイと引いている間に出るケースも多い。


    水がクリアーなら、食いつく様子を見ることも可能だ。
    サイトフィッシングと呼ばれる釣り方で、実に楽しい。


    面白い食いつき方に、「さり気なく食べる」という場合がある。
    水中を静かに近付くフライが一瞬止まって漂う時、側にいる魚がスッと吸い込む。
    何事も起こってはいないように、静かに吸い込む。
    それを見たら、軽くロッドを立てるわけだ。


    エルクヘア・カディスが沈んだ状態で観察したこともある。
    スイスイ、スーッと動き、ユラユラと漂った瞬間、一匹の魚体がキラリと光った。
    つまり、フライを口に吸い込み反転したわけだ。
    当然、ロッドを立ててフッキングに成功した。


 管理釣り場ならではの釣り方


    突然、魚たちが狂ったように水面に集まり騒ぐことがある。
    魚は、ペレットの配給時間と勘違いするらしい。


    様々な条件が重なって起こるようだが、一度は天気の良い午後のこと。


    黒いタコフライを使ったマーカー釣りでキャストした時だった。
    フライが水面に落ちた瞬間、1尾の魚が飛びついたのだ。
    そして、結構な引きにロッドを立てて耐えていると、水面が六畳ほどの広さでバシャバシャと魚だらけになった。


    まるで『畳イワシ』ならぬ『畳トラウト』状態なのだ。


    最初の魚をランディングして、急いでキャスト。すると、再び水面は魚で盛り上がりフッキング。
    これを最大7回ほど繰り返したことがあった。
    時間にすれば、15分ほどの短い間の出来事だ。


    管理釣り場で魚をフッキングしたら、試しに水面直下で引きずって寄せてみるとわかる。
    魚はバシャバシャともがき暴れて釣られている。
    それなのに、他の魚たちは「ペレットを食べたらしい」と思うようで近付いてくることがある。
    管理釣り場では、魚が騒ぐことは他の魚を散らせることではないようだ。


 最後に、釣れる釣れないを考える


    管理釣り場に足を運び、先行者に「どうですか?」と尋ねる。
    すると、「ここは、シビアですね」と答え、渋い顔をする釣り人がいたりする。


    彼の答えを、正しい日本語に翻訳すれば、
    「ダメですよ。釣れません。この釣り場、魚を放流してるんですかね」となる。


    そもそも、一日4000円もの料金を釣り人に払わせて、
    「シビアですね」などと言わせるべきではない。


    管理釣り場で釣れないということは、魚の数が少ないことの証明なのだ。
    人がどれだけ住んでいるかの目安に人口密度なる数字がある。
    魚も魚口密度を弾き出してみてはどうだろう。


    驚くほど釣れる管理釣り場は、魚口密度が高いのだ。


    ユラユラと水中を沈むフライを沢山の魚が食い気満々で見つめて、
    空中を飛んでくるフライを虎視眈々と狙っているのだ。
    だから、一尾が飛び付きフッキングしない場合でも、すぐに別の魚が飛び付く。
    サイトフィッシングしているとわかるが、水中をゆっくりと動くフライに何匹かが興味を抱き追ってくる。
    と、まったく別の場所から一気に飛び出してきた魚がくわえることがある。
    沢山の魚が居ればこそのことだ。


    「この池も、あの池と同じ密度で魚を放流してますけどね」とは、ある管理釣り場の従業員の言葉だ。
    二つの池で、余りにも魚の反応が違うために、僕の顔に明らかな不満が溢れていたようだ。
    文句を言う前に、言い訳を言われてしまった。


    魚だけは、大量に放流してもらいたい。
    釣れない釣りは、本当に悲しいほどにつまらないものだ。


イラストレーター さいとう・はるきの部屋へ戻る

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